【卵の管理・目的】

◇温帯産の半水棲ガメ(主に以下の種)の産卵後の孵卵管理方法です。

・ニホンイシガメ

・クサガメ

・ミナミイシガメ(ヤエヤマイシガメ,タイリクイシガメ)

・アカミミガメ(ミシシッピアカミミガメ,キバラガメ,他)

・クーターガメ類(クーターガメ類,アカハラガメ類)

・チズガメ類(ニセチズガメ,ミシシッピチズガメ,フトマユチズガメ,他)

以上を含む イシガメ科ヌマガメ科の半水棲種・半陸棲種

・キョクトウスッポン(別称:スッポン or シナスッポン)

 

◇孵化率を上げる為には、掘り出しての室内管理」が推奨です。


理由は以下です。

◇後述の場合、同じ場所に産卵されると、

既に産卵されている卵が破壊されてしまう可能性が高くなります。

・同一個体の、次回以降の産卵(2回目以降のクラッチ)。

・他個体による産卵。

1腹(1回)の産卵を「クラッチ」と言います。

 

◇人工的に温度と湿度を、ある程度一定に保つことが可能です。

 

①「孵化BOXの容器」

◇以下の様な容器を選択するとよいでしょう。

 

・透明か半透明で中身の確認が容易なもの。


・あまり大きくなく、水分を含んだ床材が入った重さで普段の管理に

支障が無い程度の比較的コンパクトなもの。

・床材を入れて且つ上部の空間の確保の為、ある程度の高さが必要。

外部環境の影響による温度&湿度の変化を極力少なくする目的で、

上部空間の体積の確保が重要となります。


→当方は、100均で購入しました

「食パンストック用のタッパー型容器」を活用しています。
※開口部寸法:21cm×14.5cm,高さ:16cmです。


②「孵化床の床材」

◇園芸用の「バーミキュライト」が良いでしょう。
・それ自体が「無機質」ですので、腐敗や劣化がありませんし、

カビが発生しにくい利点があります。

「水苔」を利用される方もおりますが、

「有機物」であり、カビが発生しやすい理由からお勧めしていません。


「ハッチライト」なる画期的な商品がありまして、かなり使い勝手が良い様です。

→当方は未使用ですので、効果の確認には至っておりません。
http://www.hatchrite.jp/index.html

 

③「床材の設置」

③-(a) 床材の消毒

◇主にカビの発生を防止する目的で、床材を事前に消毒しましょう。

 

・使用する薬剤は、5%ヒビテン液」が良いでしょう。

 https://ds-harma.jp/product/hibitane_con/

【注】 「ヒビテン液」は、皮膚に刺激があります。

→薄手のビニール手袋等を着用の上、作業を行なって下さい。

 

→毎年少量のみの使用で有効期限内には使い切れず、
且つある程度高価ですので、購入には無駄発生の認識が必要です。

(当方は2015年から、気休め程度の効果の期待ながら…

病魚薬 [グリーンF・ゴールドリキッド] で代用をしています。)

 

・以上の薬剤の、規定量の1/2 水溶液に「バーミキュライト」を浸します。

 

・すすいだ後に水を半分以上捨てて、同量の水道水を追加します。

 

以上にて、消毒は終了です。

 

事前に消毒薬を準備出来ない場合、

水道水(塩素消毒水)のみでの洗浄でもよいでしょう。


③-(b) 床材の設置

・バーミキュライトを、手で硬く絞った程度の水分量が適正です。

 

・容器の上側に10cm程度の空間が出来る様、床材を5cm~7cmの厚さで敷きます。

 

③-(c) 湿度の確保

・タッパー型容器の蓋は使用せず、容器の上面を透明なビニールで覆います。

 

・ビニールは、輪ゴムを利用して容器上面に固定します。
→2日~3日に1回程度の頻度で、管理 (後述) の為に蓋を開ける必要があります。

開閉が楽である為、当方は「ビニール+輪ゴム」を選択しています。

 

→この為に、容器は上面外側に輪ゴムが引っ掛かる程度の

フランジ状の突起が有るものを選ぶとよいでしょう。


・昨今の輪ゴムは、品質が悪く短期間で劣化して切れることがあります。
→もしもの場合を考え、同時に2~3本の輪ゴムを掛けるとよいでしょう。

 

・ビニールには、鉛筆等の先の尖った物で小さな空気穴を、

3×3=9ヶ所程開けます。

 

◆【 孵化BOXのセット例 】 P8020135_Rs30×70-Tr1.jpg

④「湿度の管理」

◆孵化BOX内の湿度を、70%~80%」とします。


・最初は、湿度計」が必須でしょう。

コンパクトな、以下の様な製品が使い易いでしょう。
http://www.kenko.com/product/item/itm_6937305872.html


・湿度の調整は、ビニールの空気穴の数で行ないます。
空気穴を開けすぎた場合には、セロテープで塞ぎましょう。


・丸1日で、ビニールや容器の内面に細かな水滴が付着する程度が、

目視で判断出来ます好適な湿度です。

 

最初は湿度計が必須ですが、慣れてきますと上述の状況や
卵の状態を見ての、湿度管理が可能となるでしょう。

 

⑤「温度の管理」

◆温度は、「25℃~32℃」の範囲としましょう。
・初夏からの時期は、室温管理で問題は無いでしょう。

 

・湿度計と同列の製品で、「温度計」が存在します。
http://www.kenko.com/product/item/itm_6937305772.html

 

尚、温度計湿度計は比較的品質が甘くて、
最初からかなりの誤差を有している物があります。

→通販ですと選べませんが、ショップでの購入では複数の中から、
指針の表示が他と外れていない物を選ぶようにしましょう。

 

温度計湿度計は、他の製品もありますので探してみて下さい。

 

・明け方の低温や、夏場の夜間にエアコンを停止した際の

一時的な高温は問題ありません。

 

・但し、夏場のエアコンによります常時の極端な低温は避けましょう。

 

「温度依存性決定/TSD」につきましては、後述致します。

 

⑥「卵の掘り出し~容器への収容」

当然ながら、卵を割らない様に慎重に掘り返して下さい。
→自分の爪で卵を傷付けない目的で、当方は軍手を装着して掘り出しています。

 

産卵時、メス親の後肢の爪により卵殻が傷付けられている場合があります。

大きく破卵していなければ、[アロンアルファ] 等の

瞬間接着剤にて傷口を固めてしまいましょう。

長さが1cm程度で深くない傷であれば、この処置で問題なく孵化に至ります。

 

瞬間接着剤は、空気中の水分に反応して凝固する性質のものです。

卵の水分に反応し内部までは浸透せず、悪影響を与えません。

 

掘り出した卵は、水を含んだティッシュで表面の土と、

ぬめりのある親個体の体液を綺麗に拭き取ります。
体液を残したままにしておきますと、カビ発生の要因となります。

 

【注】 カメの卵は、転卵」をしてはいけません。
掘り出したままのの天地方向を、変えない様にする必要があります。

→胚は、卵黄の上部に発生します。

転卵を行ないますと、発生した胚が卵黄に押しつぶされて死んでしまいます。

 

2B以上の軟らかな芯の鉛筆で、上側に印を付けると良いでしょう。
→当方は、「親個体記号・卵番号・産卵日」を記入して管理しています。

 

内部に浸透した場合、成分によります悪影響が懸念されますので、
油性マジックは使用しない方が無難です。

 

・孵化BOXの床材表面を指で押して凹みを作り、
卵の1/3 ~ 1/2 が埋まる程度に床材の上に安置します。

 

⑦「有精卵の判別」

「有精卵」は、卵黄が下側に沈むことが多いです。
→暗がりで、懐中電灯で透かして見ますと判り易いでしょう。

この方法を「キャンドリング」と言います。

 

→キャンドリングの際は、熱によります影響を少なくする目的で、

LEDの懐中電灯を使用するとよいでしょう。


「無精卵」では卵黄が沈まずに、横方向から見て卵黄が中央に位置します。

→その為、上側から見ると卵黄の色(黄色やオレンジ色)が目立ちます。

 

◆【 産卵直後の「無精卵」の例

→どの方向から見ても、卵の中央部付近が黄色っぽく見えます。P6220047-Rs20_Tr1.jpg

 

有精卵」では、卵黄が卵殻の下部に沈んだ様に扁平な形状です。

→卵を動かしてしまい天地方向が判らなくなった場合、

キャンドリンングを行なって、卵黄が沈んだ側を下側としましょう。

 

◆【 産卵直後の「有精卵」の例/キャンドリングをした場合

→下側に、薄っすらと扁平な形状に見えているのが卵黄です。

P6230106-Rs40×120_Tr1.jpg

また「有精卵」であれば、早くて産卵当日に、

通常は産卵後3日以内にの上面部の白濁が始まります。

→白濁が開始するまでに、5日程度掛かる卵もあります。

 

◆【 卵殻の白濁例 /産卵翌日の卵 】

→「クサガメ」の卵の卵殻白濁開始の例 P6240109-Rs40_Tr1.jpg

 

◆【 卵殻の白濁例 /産卵後30日目の卵 】

・白濁は卵殻の上面頂部から発生し、帯状に広がっていきます。

→卵や種によっては、上面の全体が白濁します。

P7210133_Rs20-Tr1.jpg

 

⑧「孵化までの管理」

⑧-(a) 水分の管理

・2日~3日に1度、ビニールの内側に付着した水分を拭き取りましょう。
→水滴が大きくなり、卵に直接落下しますとカビ発生の要因となり得ます。

 

・上記にプラスしまして、

空気穴からの蒸発で多少湿度の低下が見られる場合があります。

この場合は、卵に直接水が掛からない様、

床材の四隅にでも水道水を追加しましょう。

 

卵を含む容器全体の重量を事前に測定しておき、

重さで水分管理を行なうのもひとつの手法です。

 

⑧-(b) 光の管理/遮光の必要性

自然下での卵は、暗い土中」で孵化までの期間を過ごします。

強い光を当て続けた場合、早めに孵化が始まってしまう傾向があります。

 

卵黄 (ヨークサック) が大きく残った状態で孵化した幼体は、

虚弱で育たないことがあります。

 

以上を防止する目的で、孵化BOXは「暗い場所」に置くことを推奨します。

→当方は、2段の水槽台の下のスペースにカーテンを設置して孵化BOXを置き、

更にダンボールで作成した箱型の覆いで遮光しています。

⑧-(c) 無精卵等の処理

◇無精卵や発生が停止した卵は、「カビが発生する場合があります。

また、破裂して床材や他の卵を汚す場合があります。

 

◇空気穴から「小バエが侵入して卵を産みつけられると、

小さな「ウジ虫」が多量に発生してしまいます。


→上述の悪影響や、他の正常な卵をカビさせる可能性がありますので、

早めに処分をしましょう。

 

⑧-(d) 孵化日数

最初に掲げた温帯種の場合、孵化までの日数は60日~75日程度です。

管理温度が高いと、孵化日数が短くなる傾向があります。

【注】 35℃を超える様な極端に高い温度では、

「多甲板」などの奇形の発生率が上がることが判っています。

 

・種や管理温度・管理方法の違いによっては、産卵~孵化の期間が

上述の日数を超え、76日~100日前後 必要となる場合があります。

 

⑧-(e) 胚の成長確認

 ・産卵後数日が経過した卵は、「キャンドリング」を行ないますと

卵黄の周囲に「血管」が見える様になります。

 

◆【 血管の確認例 /産卵後30日目の卵 】

P7210131_Rs20×70-Tr1.jpg

⑨「孵化時の管理」 

⑨-(a) 孵化の兆候~孵化の開始

(ⅰ)孵化が近づきますと、卵殻表面にヒビが目立ちはじめます。

→幼体が卵殻のカルシウム分を吸収する為で、卵殻が脆くなる為です。

 

(ⅱ)孵化開始(卵の割れ始め)直前になると、卵が汗をかく様に

直径1mm以下の水滴が、内部から複数にじみ出てきます。

→この水滴を拭う必要はありません。

 

(ⅱ)の兆候の1日~3日経過後に、卵の片端に割れが生じます。

→幼体はまず、上顎の先端に有する「卵嘴」を使って卵殻を切り裂き、

次いで両前肢を使って卵殻を大きく破ります。


⑨-(b) 孵化開始後の卵の管理

◇以下の理由により、孵化が始まった卵は隔離します。

・孵化した幼体は、他の卵を動かしたり床材に潜ったりします。

・卵から出る液体(白身)により、床材が汚れます。

 

◇隔離容器は、孵化BOXと同程度のサイズで可です。

・キッチンペーパー等を敷き、湿らせて湿度を保ちましょう。

 

ヨークサックの吸収が足りていない幼体は、孵化が始まった後の数日間、

卵内に留まってヨークサックの吸収を待つ場合があります。


【注】 幼体を、人の手で無理に卵から取り出すのは禁物です。

→健康な個体であれば、3日~5日の内に自ら卵から出てきてくれます。

 

ヨークサックをある程度吸収してから卵を破った幼体は、

早いとその日の内に、多くは翌日か2日後までに卵から出てきます。

 

⑩「孵化幼体の管理」

別の知恵ノート作成予定です。

 

⑪「温度依存性決定[TSD]について」

判っている範囲でカメの大半の種で、孵化期間中のある一定時期の
温度に依存して、仔ガメの性別が決定します。

これを「TSD」と言います。

 

・カメの種により、温度による雌雄の出現パターンが異なりますが…
ニホンイシガメ等、最初に掲げました種は、低温でオス・高温でメスが多くなるタイプです。

 

→常時25℃程度の管理では、100%近くがオスとなります。
逆に30℃を超えますと、メスの比率が100%に近づきます。

 

※[ピンク色の項目]は、別の知恵ノートを作成させて頂く予定です。